Raindrops on roses and whiskers on kittens
Bright copper kettles and warm woolen mittens
Brown paper packages tied up with strings
These are a few of my favorite things
私のお気に入り
3日間やむことのない雨のせいで今日もまた出発は延期された。
「ほら、コーヒー」
未だに雨の日はあまり調子の良くなさそうな八戒に代わって、悟浄がコーヒーを出す。
「あ、ありがとうございます、悟浄。」
「い〜え、どういたしまして。」
にっこり笑って言う悟浄が俺にもコーヒーを渡す。
けれど・・・
美味いと感じない。苦味だけが際立っているようで。
新聞も文字の羅列にしかみえねぇ・・・
そんな、イラついた雰囲気を感じ取ったのか
「なぁ、八戒〜買い物いこ〜よ〜。雨もそんなに強くないしさぁ」
悟空が言いはじめ。
「そうですねぇ・・・」
八戒がチラリとこっちに視線を遣したのを感じて、カードを投げる。
「じゃあ、ちょっと言ってきますね。・・・・悟浄はどうします?」
「ん〜、俺は隣の部屋で昼寝してるわ。いってらっしゃ〜い」
「そうですか、じゃあ行ってきますね。」
にっこりと微笑む八戒と、それに答えるようにひらひらと手を振る悟浄。
「ちっ」
視界を遮るように広げた新聞の向こうで、パタンとドアの閉まる音がした。
『江流、知ってますか?イヤなことがあったら、好きなものを一杯思い浮かべるんですよ。』
いつだったか、お師匠様に言われた言葉が頭に浮かぶ。
『ほら、あなたの好きなものを言ってごらんなさい。』
好きなもの・・・・・・
思いうかばねぇ。
「江流」
そう呼んだお師匠様の顔だけが、思い浮かぶ唯一のこと。
江流・・・
江流・・・・・
江流・・・・・・・・
・・・・・三蔵
さんぞう
耳の奥で鳴り響く言葉がいつの間にか摩り替わっていてイラつく。
俺に微笑みかけてくれる、あの方の顔さえも
いつの間にか別のものにとって代わっていた。
あの、髪の毛が好き。
けれどいつも飄々として誰の物にもならないと言っているようで。
だから、気に入っている分だけイラつく。
あの、紅い眼が好き。
だけどあの誰にでも笑いかけてしまう表情が。
独占欲なんてもんを思い知らされるようで気にくわねぇ。
色んなもんが、気に入っていて、気にくわねぇ・・・。
「なんだ、俺は。」
思わず自嘲気味に呟いた。それとほぼ同時に。
「お〜い。」
聞きなれた声。ここにいるのは俺一人なんだから、呼ばれているのは百も承知だ。
「聞こえてるなら返事しろよ、三ちゃん。」
それとも、本気で耳遠くなった?三蔵様もお年ね・・・
ふざけながら近づいてくるアイツ。
そして、もう手を伸ばせば届く距離になって
「どうしたの?・・・さんぞう。」
「・・・別に。何でもねぇ。」
「やっぱ聞こえてんじゃん。てか、何でもなくないだろ?」
あくまで新聞を読んでいるフリをする俺に
「ちゃんとこっち向いてってば。さんぞ。」
そう言って俺の手から新聞を奪い取る。
「何しやがる」
「ん?たださ、三蔵さまの機嫌を直すのが俺の勤めかと思ってさ。」
「別に機嫌悪くねぇって言ってんだろうが。」
「はいはい、わかったから。」
全く、しょうがないねと言った顔をしながら、あいつは笑う。
「とりあえず、これで手ぇ打ってよ。」
ふんわりとまわされた腕と、頬を掠めるアイツの髪の毛
「三蔵」
そのまま、ほんの一瞬だけ重なる温もり。
目を開くと目の前には紅い目をもつ男。
そこに映っているのが今は自分だけだということ
「こんなもんじゃ足りねぇ。」
「ったく、ワガママってーか、欲張り何だから。三蔵さまは。」
気の済むまでお付き合いしましょ。
そういうと、また口付けが降ってきた
気に入っているものは、ほとんど気にくわねぇもの。
好きと嫌いは表裏一体
でも
俺の名前を呼ぶ声だけは、何をおいても、
俺の好きなもんに間違いなさそうだ
Raindrops on roses and whiskers on kittens
Bright copper kettles and warm woolen mittens
Brown paper packages tied up with strings
These are a few of my favorite things